「だから、さ。篤志もそうなんじゃないかと思って。」
「………」
「俺は、悪くねぇと思うよ。そいつのために頑張ろうと思える。そいつがバスケが好きだって再確認させてくれる。そういう奴なら、悩んでも調子悪くなっても、試練だと思って乗り越えられる。」
俺は、芽依が好きで好きで好きで。
芽依以上に大切なものなんてなくて。
「そいつを失くしたら、俺はバスケを続けられないと思います。それでも……?」
「バスケだけが人生じゃない。篤志は、その時に大事だと思うものを大事にすればいい。俺も、アイツのためならバスケ捨てれるよ。」
先輩が言う言葉じゃねぇな、って苦笑いした村谷先輩はすごくカッコよかった。
俺が今大事だと思うもの。
すべてを捨ててでも守り続けたいもの。
それはもう、ずっと昔から決まりきってる。
『あっちゃん!!』
ただ浮かぶのは、アイツの笑顔だけ。
「すみません、トイレ行ってきます」
俺は立ち上がって、トイレに向かった。
そして、洗面所で思い切り水をかぶる。
もう手段は選ばない。
俺の大事なものは、芽依だけ。
*