「おかえり、あっちゃん」
家に帰ると母親が俺を出迎える。
………芽依の靴は…ない。
「ただいま……芽依は?」
震える声を隠して、冷静なフリをして母親に訪ねる。
母親はキョトンとした顔をして首を傾げた。
「まだよ?あっちゃんと一緒だと思ってたけど」
「………ちょっと、探して来るわ」
「気を付けてね!」
母親の声を背中に受けて、玄関の扉を開ける。
「………っ」
見えたのは、芽依の背中と笑顔の杉浦という男。
門を挟んで、楽しそうに話している。
呆然と立ち尽くす俺に気付いた杉浦がニヤリと笑って言った。
「芽依ちゃん。考えといてね」
……何をだよ
「……うん、わかった」
……だから何をだ、っつってんだよ
「じゃ、帰るわ」
「うん、ありがとね、亮太郎くん」
……『亮太郎くん』?
さっきまで『杉浦くん』って呼んでたじゃねーか。
なぁ、芽依。
杉浦の帰って行く背中を見届けて、芽依がこっちを向いた。
「っ!あっちゃん!帰ってたんだ」
「…………」
なぁ、なんで目合わせないわけ?
芽依。
まさか二人は本当に
『両思い』?
*