「ありがと、ね……」
岡田さんの家の前に着くと、俺はすぐに家の方向へ向きを変える。
芽依に会いたかった。
弁解したかった。
俺は、芽依と勉強するの楽しかったよって。
岡田さんのことは、ちゃんと理由があって送ってたんだよ、って……
こんなこと言っても、芽依はどうでもいいと思うかもしれない。
でも………、
俺は芽依が好きだから。
俺には、芽依だけだから………
「篤志くん!」
呼ばれてパッと振り返ると、走ってきた岡田さんにギュッて抱きつかれた。
「岡田さ、…」
「好きなの!」
「………っ」
「気付いてないフリなんてしないで……私を見てよ…」
俺に抱きつく岡田さんは震えていて。
普通の男ならそのまま抱き締め返すのかな?
でも俺には、どうしてもできない。
「ごめん、岡田さん」
肩を押して彼女を離す。
「気付いてました、岡田さんの気持ち。でも……なかったことにしたかった」
「…………っ」
ヒドイことを言ってるのはわかってる。
でも……、どうしても無理なんだ。
芽依しか、考えられないんだ。
「岡田さんの気持ちには、応えられない。……一生」
岡田さんに背を向けて歩き出す。
上を向くと、一瞬、流れ星が見えた気がした。
………帰ろう。芽依のいる家に。
*