「平岡さん!」


必死で歩く。


一緒に歩く二人を見なくていいように。



「平岡さんって!!」


腕を捕まれて、無理やり振り向かされる。


涙目の私を見て、杉浦くんは悲しそうな顔をした。



「…泣くなよ。………俺が泣きたいって」


「え………?」



ポスッと音を立てて、杉浦くんの腕の中に閉じ込められる。


……抵抗できないように、強い力で。



「好きな子にさ、その子の好きな奴に嘘吐くために使われた」


「………っ」


私……、自分にいっぱいいっぱいで杉浦くんにすごく失礼なこと……!



「ごめ……っ」


「ま、いいけど。いくらでも使ってくれたらいいよ。それで平岡さんが楽になるなら」


「…う…っ…」



楽になんて、ならないよ。


幸せだったのに。


いつもより優しいあっちゃんに触れることができて。


昔みたいに抱き締めてくれて。



あっちゃんは、私を最高に幸せにしてくれる。


でも………、落ち込ませるのも簡単。


あっちゃんの一挙一動にこんなに振り回されて。


痛いよ、あっちゃん。



杉浦くんの背中に腕を回すと、杉浦くんは更に私をギュッと抱き締めてくれた。



*