朝陽の顔が、切なく歪む。
いつもクールな朝陽の、こんな顔は私も亮太郎くんも見たことがなかった。
「なぁ、平岡……」
朝陽が口を開く。
弱弱しい、今にも泣きそうな口調で
「俺ら、終わるのかな……」
俯いた朝陽の足元に、一粒水滴が落ちた。
「朝陽……」
亮太郎くんの声が、静かすぎる廊下に響く。
「終わりたくねぇよ……」
私は俯く朝陽の頬を支えて、顔を上げる。
「大丈夫だよ。」
「……っ」
泣くほど好きなら、きっと大丈夫。
「みなみが好きなんでしょう?好きなら好きでいいじゃない。」
「でも……っ」
「みなみも、朝陽が好きなの。」
「平岡……」
「みなみ、探してくる。大丈夫だよ、朝陽。」
ニコッて笑うと、私はまた走り出した。
「職員室、行くわ」
「朝陽……」
「先生に、言ってくる。みなみと別れるつもりはない、って。」
「頑張れよ。辛いと思うけど」
「ありがとな。お前も頑張れよ。平岡、バカだけどいい女じゃん」
そう笑って、朝陽は去って行った。
「好きなら好きでいいじゃない、か……」
苦笑して、亮太郎も教室に向かって歩き出した。
*