『ねぇ、芽依ちゃん』
『……』
岡田さんは、悲しい顔で俯く。
雨が、岡田さんにも降り注ぎ始めた。
『篤志くんに愛されるって、どんな気持ち……?』
『……っ』
岡田さんは、あっちゃんのことが好きで。
私もあっちゃんに片想いしていたから、その気持ちはわかる。
あっちゃんに愛されてる女の子は、どんなに幸せなんだろう。
あっちゃんは、好きな女の子にどんな顔を見せるんだろう。
あっちゃんに彼女ができた時、顔も知らない彼女に嫉妬した。
『この雨は、篤志くんの涙なんかじゃないわ。』
岡田さんは自分に降り注ぐ雨に手を伸ばし、言った。
『この雨は、あなた達、姉弟が愛し合うために、犠牲になる人の涙よ。』
岡田さんに降り注ぐ雨は、更に強くなった。
『あなた達の両親、友達、あなたや篤志くんを好きになった人の涙……』
まるで全身が心臓になってしまったかのように
自分の鼓動しか聞こえなかった。
岡田さんの声が、遠くなる。
*