「…失礼しまーす」
チャイム鳴ってすぐに職員室に来ると数秒前に教室を出た先生は自分の席でお茶を飲んでいた。
「お、来たか南。待ちくたびれたぞ」
「先生、あたしと教室出るタイミング一緒でしたよね?なんで?ルート一緒だったのに先生の後ろ姿1度も見なかったんですけど」
「それはお前が遅いからだ」
「…それも来て早々可愛い生徒の頭を掴むのはいけない気がする」
「授業聞いてない生徒は可愛いくないから大丈夫だ」
「……そうですか…で?何すればいいの?」
「理解が早くて助かる。
6限目あるし、そうだな。
俺今から3年2組の授業だから3年2組の教室に俺の荷物持って行け」
3年2組……聞いた瞬間、頭の中にあの頃の記憶が浮かぶ。
「そ、それただの嫌がらせじゃないですか。
どうせ荷物なんて教科書とチョークだけでしょ…」
嫌だ、行きたくない。
「嫌がらせに決まってんだろ」
「…そ、それも3年の教室なんて2年生が行くの気まずいから行きたくない」
「南なら大丈夫だろ?
お前、前まで良く行ってただろ、お前が3年の階にいるとこ俺良く見たぞ」
「それはっ……」
確かに2ヶ月前は度々階段を上がって行っていた3年の階。
先輩の階だから気まずいと思いながらも会いたい気持ちの方が大きくて行っていた。
「時間もないし、さっさと行って来い」
ほら、と言われながら空気の読めない先生が教科書とチョークを無理やり渡してくる。
「チャイム鳴る前にさっさと行って来いよ」
やる気のない教師は俺は便所行くわ、と颯爽と職員室から出て行った。