「お、南じゃん」
スマホから顔を上げてあたしに手を上げる。
「どうしたんだよ」
「ん…さっきのお礼言いたくて」
「別にいいのに。俺も用事があったし」
「…巧先輩?」
「ん…まぁな」
気まずそうに笑う長谷部にわたしも苦笑いを返す。
「別にもう大丈夫だと思ったんだけどね」
長谷部の隣の席にソッと座る。
「でもダメだった…どんだけ諦めが悪いのかね、あたし」
「南…」
あ、そういえば目的忘れてた。
急いで鞄を漁り、
「長谷部、これお礼」
さっき買ったパックのカフェオレを渡す。
「お、これ俺の好きなのじゃん」
「兄弟で好きらしいね…聞いたよ」
『これ俺も好きなんだけどさ、優も好きなんだよ。
やっぱ兄弟って味覚も似てんのかな』
そう言って、カフェオレを飲んでた。
長谷部はカフェオレを見つめた後、あたしを真っ直ぐな目で見てきた。
「じゃあ、知ってる?」
「何を?」
「なんで俺がお前の好きなチロルチョコの味知ってるか」
「え?」
「……」
確かに言われてみればなんで長谷部は知ってるのか。
考えてもみなかった。