――こうやるんだよ、と充くんの手が動く。


耳元でダンッ!と音が聞こえ背中に壁の冷たさを感じるまで、それは私からはスローモーションのように見えた。


けして抱き締められてはいないのに、スーツの上からでもわかる筋肉質の腕にギュッと抱かれているような錯覚に陥る。





「これが壁ドン、分かった?」





充くんの言うようにこれが本当の壁ドンなら私がさっき充くんにしたのは壁ドンではない。





「どうドキドキする?」

「うん」

「じゃ、もっとドキドキしてみる?」





私が反応する前に充くんの顔が近付いてきて、それと同時に私の足の間に充くんの片足が割って入ってこようとする。


それはまさに夜の充くんのようで、ここが給湯室だという事を忘れそうになる。