驚きのあまり動けずにいると。





「どうぞ、橘さん」





南くんが真っピンクの花柄の傘をゆっくりと開いて、あたしの上に差しかけてきた。




さらなる驚きに、あたしはぐうの音も出ない。






「……橘さん? どうかしました?」





「へっ、や、だって、それ………」






あたしは動揺しつつも、自分の頭上を彩る花柄の傘をかろうじて指で示した。




すると南くんは、あたしが持っている青い傘を指さして、






「それ、穴、あいてるんでしょう。


濡れちゃいますよ。


俺の傘に入ってください」






と、いつものようにもそもそ言って、有無を言わさぬ調子で歩き出した。