「え……ど、どしたの南くん。


ってゆーか、あたしの名前、知ってたんだね。


てっきり、ひとの名前覚えるのもめんどくさいのかと思ってた」





ちょっと失礼かな、と思いつつ正直に言うと、南くんはいつもの眠たげな目であたしをじっと見つめ返してきた。





「はぁ、まぁ………たしかに、名前覚えるのはめんどくさいですけど。


橘さんみたいに何度もしつこく声かけてくる人は初めてなので、すぐ覚えました」





「は? しつこくってすみませんでしたね!」





ちょっとムカついたので怒った顔をしてやると、南くんの眠たげな目が、かすかに見開かれた。




そして、次の瞬間、ふわりと細められた。





ん?と思って注視してみると、口角がわずかに上がっている、ように見える。





え………もしかして、笑ってる!?