~美姫 side ~


拓真の声


あれは…怒ってる声?

それとも心配してる声?


…たぶん心配して

しすぎて怒ってるんだと思う。


夜の薬も忘れちゃったし…

しょうがないよね。


しゃがんで呼吸を整えていると


拓真『…美姫?』


美姫『…拓真……。』

息が上がってる…

走ってきてくれたんだ。


拓真『…よかった。急に居なくなるから何かあったのかと…』

一安心したように隣に座りこんだ。

美姫『…ごめんね。』

いつも心配かけて

迷惑かけてほんとにごめん。


拓真『逢えたからいーよ。
……でもどうした?なんかあった?』

心配そうな顔でこっちをみてくる。


美姫『…薬ある?』

拓真『忘れた?』

頷くと

拓真 『はぁ………はい。』

ため息をつきポ ッケから出してくれた。

美姫『……ありがと。』

受け取り飲み終わると


拓真『体は?』

美姫『え?』

拓真『調子悪いんだろ?』


…なんでわかるの?

言ってないのに。


美姫『もう大丈夫だからみんなのとこ行こっか?』

そう言って立ち上がろうとしたとき


グイッ


拓真『もう少しこうしてた方がよくない?』


腕を掴まれまた座る形になった。


美姫『なんで?
みんな探してるかもだから行かないと…』


拓真『……いいだろ。
体調のことも心配だし…』

いいだろって…

よくないよ…

たぶん蒼心配してると思うし…


美姫『体はもう大丈夫だから…行こ?』

みんなのところに行くように言うと


拓真『……俺がこうしてたいんだよ。』


うつむきながら小声で言ってきた。


拓真『今日全然話してないし。』


確かに今日はあんまり話してない。

でも…


美姫『いつもたくさん話してるじゃん。』


拓真『…別にいいだろ。』


今日の拓真いつもと違う…

なんか…こどもみたい。

美姫『そうだね。じゃあ…何話そっか?』


拓真『急に聞かれてもこまるんだけど。』


美姫『ふふっ…そうだよね。』


2人でそんなたわいない会話をしてると


拓真『美姫はさ…その…紺野のこと…好きなのか?』


言いづらそうにそんなことを聞いてくる拓真。

その質問に答えるの恥ずかしいんだけど。


美姫『…好きだよ。』


拓真『……そっか。』


あれ?

気のせいかな?

今…一瞬寂しそうな…

悲しそうな顔した…

あの笑ってるけど

心の中では泣いてるような…

1番みたくないあの表情。


…そんな表情にさせるようなこと言った?


美姫『拓真こそ好きな人いないの?』


蒼とのこと聞かれるのが恥ずかしいのと

拓真のあんな顔みてたくなくて話を変えた。


拓真『………いるけど。』


………え!?


美姫『いるの!?』


恥ずかしそうに目を逸らしながら


拓真『…ん。』


いたんだ…

こんなに近くにいるのに知らなかった…

拓真の好きな人ってどんな人なんだろう。


美姫『その人と付き合ってるの?』


拓真『…ずっと片想い中。』


へぇ…

なんか拓真との恋バナって新鮮だなぁ。


美姫『気持ち伝えないの?』


拓真『…うん…てかできない…かな。』


できない?

なんでだろ…

拓真なら大丈夫だと思うんだけど…

だって…


美姫『拓真モテるじゃん!
かっこいいし運動神経いいし何より優しいじゃん!だからきっと大丈夫だよ。』


拓真がどれだけいい人か。

それはわたしが1番知ってる。

ずっと傍にいたんだもん。


拓真『そんなことないけど。
好きな人に好きになってもらえなきゃ…な。』


また…

また無理して笑ってる。

なんで?

拓真のそんな顔みたくないのに…


美姫『大丈夫だよ。
拓真はおすすめの物件だから!
わたしが保証する。』


拓真の好きな人に言ってあげたい。

こんなにいい人

めったにいないよ?

ただの幼なじみの為に

将来の夢を決めてくれて

ただの幼なじみの為に

すごく心配してくれて

ただの幼なじみの為に

泣いてくれる。


こんな人探してもなかなかいないよ?


わたしね

今までたくさん…

数え切れないくらい

拓真に迷惑かけて

面倒みてもらってきたの

自分のことよりわたしなんかの為に自分の時間をわたしに捧げてくれたの


だから拓真には幸せになってもらいたい。



拓真『…物件ってなんだそれ。』


やっといつもの顔で笑ってくれた。


美姫『だってほんとのことだもん。』


拓真『じゃあ……』


さっきよりも近くにきて


拓真『このおすすめの物件もらってくれる?』


……え…?

冗談?

急に真面目な顔でそんなこと言われたら冗談かわかりにくいよ。


…冗談だよね?


なんて答えようか戸惑ってると



詩織『あ〜〜!!いたぁ〜!
美姫〜!拓真〜!』


みんなが来て自然と話は終わった。