~拓真 side~
病院に着き病棟に入ると
親父と看護師が待ち受けていた。
美姫をみると
「やば…」
とでも言ってるような表情。
五十嵐先生『…美姫ちゃんおかえり。』
いつもどおりの優しい顔に優しい話し方。
でも今は逆にそれが怖い。
いっそのこと怒ってくれたほうがまだいい。
美姫『…ただいまです。』
いつもは敬語なんか使わない美姫が敬語で話してる。
五十嵐先生『なんで抜け出したの?
勝手に出かけちゃダメでしょ?』
美姫『……学校に行きたかったの。
だから外出許可もらおうとしたのに
ダメって言われたから…』
五十嵐先生『ダメって言われたら外出したら
ダメなんだよ。』
美姫の味方してあげたいけど…
親父の言ってることは正しいし
親父だって意地悪で言ってるんじゃなくて
主治医として美姫のことを考えて言ってるのが
わかるから何も言えない…
美姫『……ごめんなさい。』
五十嵐先生『もういいよ。
無事に帰ってきてくれたからね。
疲れたと思うから部屋で横になっててね。』
それだけ言って親父は医局へ行った。
病室に行くと
美姫は制服からパジャマに着替え
点滴を繋げられ
さっきまでの女子高生が嘘のように
「入院してる人」
みたいになった。
…入院してる人なんだけど。
そんな美姫をみてると
山瀬『それにしてもさぁ…』
急に山瀬が話し出した。
山瀬『美姫ちゃんよく抜け出せたねー。』
…たしかに…
病院の警備はちゃんとされてるし
警備員もいろんなとこにいる。
今更だけどよく抜け出せたな。
美姫『何年ここにいると思ってるの?
抜け出すのなんて簡単にできるよ♪』
自慢げに話してる美姫。
でも…
拓真『そんな簡単にいかないだろ。』
服とか…
その格好(パジャマ)じゃ外に出れないだろ。
美姫『あ、それは…』
詩織『それはねぇ〜』
美姫の言葉を遮って詩織が割り込んできた。
詩織『あたしが手伝ってあげたの!
服持って来たり〜
美姫だってバレないように変装道具
(メガネ・マスク)持って来たりね♪』
……コイツの仕業か。、
おかしいと思ったんだ
確かにながく入院してる美姫なら
抜け出すのは簡単にできると思う。
でも美姫はそんなことしないし
してもすぐに連れ戻されるから。
ここの病院で働いてる人はほとんどの人が
美姫のことを知ってる。
だから変なことをしてたらすぐに病棟に戻される。
拓真『はぁ…お前なにしてんだよ。』
詩織『だって頼まれたんだもん!』
「だもん!」じゃねぇよ。
美姫『詩織がいなくてもこうしてたけどね。』
おいおい美姫さん?
そんなこと言ったら…
五十嵐先生『美姫ちゃんを重点的に監視しとかないとだね。』
親父がニコニコ笑って部屋の中に入ってきた。
ほらな。
美姫の表情から笑顔が消えた。
五十嵐先生『もうこんなことしないこと。
いいね?』
美姫『はーい。』
熱や脈を計り
軽く診察をして親父は出ていった。
ベッドの上でしょんぼりしてる美姫。
少しは反省したかな…?
詩織『…また抜け出したい時は言ってね!
手伝ってあげるから♪』
コソッとそんなことを言ってる。
ほんとコイツは…
懲りねぇのかよ。
ビシッ
詩織『ちょっと柊!なにすんの〜!』
柊『…お前が悪いだろ。
もうこんなことすんなよ。
いいな?』
詩織『はいはーい。』
夏妃『さて…気を取り直して…
お勉強はじめよっか♪』
るんるんと楽しそうに教科書とノートを取り出す夏妃。
詩織と山瀬が猛反対したけど…
柊と夏妃には敵わず…
病院で勉強会をやることに。
いつもどおり柊は詩織を
そして俺は美姫をみようとすると…
山瀬『美姫ちゃん保健得意だよね?
俺さぁ…保健わかんないんだよねー
だからさ…教えてよせんせ♪』
美姫に近づき訳のわからないことをいってる
山瀬。
美姫は相手にしてないし
まず山瀬の言ってる意味がわかってない。
コイツを美姫に近づけんのは危ない。
…しょうがねぇな
拓真『わかんねぇなら俺が教えてやるよ。』
俺だってコイツに教えたい訳じゃない。
でも…
美姫に近づけるよりは全然マシ。
山瀬『……いや、俺そんな趣味ないから。』
はぁ!?
なに勘違いしてんだよ!
拓真『ちげーよ!
そんな趣味ねぇし!!』
美姫や詩織がケラケラ笑ってる。
詩織『拓真そんな趣味あったの〜?
はじめて知ったぁ〜。』
こういう時の詩織の発言は正直言ってうざい。
俺じゃ手に負えないし…
ここは…
拓真『柊!コイツなんとかしろよ!』
柊『…拓真の趣味がなんだっていいから
早くこの問題解けよ。』
柊…
その言い方だと俺がほんとにそういう趣味が
あるみたいじゃねぇか。
文句を言う詩織を柊が連れていき少しは静かになったかと思えば
山瀬『ごめんね拓真くん。』
は?なにが?
山瀬『拓真くんには悪いけど…
俺そんな趣味ないから…』
…………
なんなんだこれ。
美姫はさっきからお腹を抱えてケラケラ笑ってる。
「いい加減にしろ」 と言おうとしたとき
夏妃『いい加減にしなさい!
あんたは保健よりもやらなきゃいけないのが
たくさんあるでしょ!
…私が教えてあげる。』
そう言って山瀬を強引に引っ張っていった。
美姫の病室は個室でわりと広くて
大きい机があるからそこで
柊は詩織を
夏妃は山瀬の勉強をみてる。
美姫はベッドについてる机でやるんだけど…
まだ笑ってる。
笑いすぎだろ。
拓真『…笑いすぎ。』
美姫の白くて柔らかいほっぺをつついた。
美姫『えへへ〜だっておもしろかったんだもん♪』
ただほっぺをつついただけなのになんか照れくさくて顔がニヤけそうになるのを必死にこらえた。
詩織『拓真〜キモいよ〜。』
拓真『うるせーよ。 』
ほんと…
いつもいいとこでジャマがはいるんだよな。
俺たちも勉強をはじめ
数学を教え
真剣に問題を解こうとしてる美姫をボーッと
みてると
俺の視線に気づいたのかこっちを向き
目が合った。
この状態が何秒か続き
美姫の口が開いた。
美姫『なに?
そんなに山瀬くんが気になる?』
クスクス笑いながらそんなことを言い出した。
なにを言い出すかと思えば…
少し期待してた俺がバカみてぇ。
コツン
美姫の頭を軽く叩き
拓真『…バカ。』
そんなやりとりをしてると
…なんか妙に視線を感じる…
さっきまで勉強をしてた
柊・詩織・夏妃・山瀬がおもしろそうにこっちをみてる。
カァー…///
いつからみてたか知らないけど
絶対俺ニヤけてた…
恥ずかし……///
山瀬『拓真くんって反応かわいいねー。』
詩織『そうなの〜!ねっ柊♪』
柊『……あぁ。微笑ましいよな。』
夏妃『そこらへんの女子よりはかわいいよね。』
……お前ら…
小声で言ってるつもりかもしれないけど
全部丸聞こえ。
そんなとき
ガラガラガラ
部屋のドアが開き入ってきたのは…
紺野だった。