~蒼 side ~
今日で1学期が終わる。
いつもどおり学校へ行き保健室に向かって
歩いてると
一人の生徒の姿が…
…おかしいな
この時間はもう教室にいるはずなのに…
それに…
なんか見覚えのある後ろ姿。
もしかして…
…美姫?
…いやいや
それはないだろ。
だって美姫は入院してんだから。
昨日だって会ったし
さっき家を出るときにもメールしてたし。
しばらくその生徒をみつめてると
俺の視線に気づいたのか
振り返った。
…………
…やっぱな…
その生徒は…
美姫だった。
美姫は
「やばい人に見つかっちゃった…!」
みたいな顔をしたかと思ったら
走って逃げてしまった。
えぇ…
逃げんのかよ。
てかなんでここにいんだよ。
今日はなんか検査あるって言ってなかったけ?
いろいろ考えてるけど…
まずは美姫をなんとかしないと。
てゆーか…
走っちゃダメじゃなかったか?
急いで追いかけるけど
…意外に速い。
とても病人にはみえない。
…あれ…?
なんかスピードが遅くなった…?
美姫は必死に逃げてるけど
俺に適うはずもなく…
蒼『…つかまえたっ!』
逃げられないように後ろから抱きしめる。
美姫『はぁ…はぁ……はぁ……』
苦しそう…
こうなっちゃうから
走っちゃダメだって言ってんのに…
蒼『…美姫?
ほら深呼吸して?』
そう言うと素直に言う事を聞いてくれて
しばらく呼吸を整えると
美姫『……離して。』
えー…
一言目にそれ?
蒼『…やだ。離さない。』
学校で会うの久しぶりだし
もっと話したいし…
美姫『…だれかに見られたら困るでしょ?』
…たしかに…
今は生徒は教室にいるけど
教師はいつ来るか…
………なら
保健室行くか。
ヒョイッ
美姫を抱え歩き出すと
美姫『ちょっ…!どこ行くの…!?』
蒼『保健室♪』
保健室なら先生たちもめったに来ないし
ジャマされない。
美姫『………誘拐。』
…誘拐って…
なんだよそれ。
失礼だな。
俺からおりようともがいてるけど…
美姫の力じゃ…無理。
蒼『大人しく捕まってな。
…じゃないと落とすよ?』
意地悪く言うと
さっきまで離れようとしてたのに
今度はギュッとくっついてきた。
…何それ
かわいいんですけど。
そのまま保健室に連れていきイスに座らせ
さっきから気になってたことを聞いてみる。
蒼『…でなんでここにいんの?
まだ退院じゃないでしょ?』
美姫をみると困った顔をしてる。
まさか…
美姫『外出許可もらったの!』
……嘘だな。
本当…わかりやすい。
この前の五十嵐先生の様子だと
そんな許可出さないと思うし…
ということはやっぱ…
蒼『抜け出して来たんだ?』
美姫『え!?なんでわかっ…違うよ!!』
いやいや…
それはさすがに誰でも嘘だってわかる。
蒼『五十嵐先生の言う事聞けよ。
…体は?大丈夫?』
美姫『うん!!もうバッチリ!』
たしかに顔色はいいし
大丈夫そうだけど…
美姫『学校終わったら病院戻るから!
今日半日だし!!』
体調も大丈夫そうだし…
あと数時間ならいいかな。
蒼『…わかった。
でも体調悪くなったら誰でもいいから
言うこと!
おっけ?』
美姫『うんっ!!』
そんな笑顔見せられたら反対できないだろ…
思わず抱きしめようと腕を掴むと
美姫『いたっ…』
え?何が?
俺なんかした?
蒼『どうした?』
美姫『…今ルート入ってるから…』
…ルート?
蒼『なにそれ?』
美姫『蒼ルートわかんない?』
少し笑いながら聞いてくる美姫。
全然わかんないんだけど…
なんなんだ…ルートって…
考えてると
美姫『ルートっていうのはね〜
よくドラマとかでも出てくるけど
点滴の針を刺してある状態で
これがあればあとは薬を繋げるだけなの。』
そう言って腕を見せてくれた。
その腕には針が刺してあり
抜けないようにしっかりテープが
貼られていた。
美姫『わたしね、血管細くてなかなか
いいところに刺さんないから
1回いいとこに入ったら
薬繋げてなくてもまだ針は刺したまんまに
してることが多いの。』
苦笑いしながら話してくれた。
蒼『へぇ…それ痛くない?』
見た目は痛そうなんだけど…
美姫『大丈夫だよ。
点滴は刺すときと抜くときだけ頑張れば
いいからね。
いいとこに入っちゃえば痛くないよ。
…触ると痛いけど。』
おぉ…
なんかすげぇ。
俺は点滴とかあんまりやったこと
ないからわかんないけど…
蒼『点滴って抜くときも痛いもんなの?』
刺すときはわかるけど…
抜くときは針がなくなるから
痛くないと思うんだけど…
美姫『痛いよ〜!
むしろ抜くときの方が痛いくらい!』
だからなんで?
美姫『刺すときは刺すときだけ我慢すれば
いいけど抜くときは針が抜けないように
頑丈にテープが貼ってあるから
そのテープを剥がすのが痛いの。
だからいつも終わったあと肌が赤くなっちゃう。』
そうなんだ…
はじめて知った。
やっぱすげぇな。
俺より全然医療のことわかってる。
てかそれよりも…
蒼『…美姫こっち来て?』
近くにいたい。
最近林間学校があったり
美姫が入院してたりで
二人になる時間がなかなかなくて…
美姫不足。
美姫は黙って俺の近くに来て
小さい体で抱きついてきた。
俺も抱きつこうとすると
顔を赤くして
美姫『…じゃあわたし行くね!』
そう言って出ていってしまった。
そういうとこかわいくて好きなんだけど…
俺…まだ抱きしめてないし…
まぁ…
あとですればいっか。
とりあえず今日は早く仕事終わらせて
病院まで連れてくか…
メガネをかけ
パソコンに向かった。