~美姫 side ~
美姫『………ん……』
……ここ……旅館…?
なんで…?
確か…
海行って溺れちゃって…
それからの記憶がない。
誰かが来てくれたっぽいのは
覚えてるけど…
誰だろ…
やっぱり拓真なのかな…
ボーッと考えていると
拓真『美姫?』
隣で寝てた拓真が起きた。
美姫『ごめん。起こしちゃったね。』
拓真『いや全然大丈夫。
てか体どう?痛いとこない?』
目をこすりながら起き上がる拓真。
体は大丈夫だけど…
あのあと…
記憶がない間のことが気になる。
美姫『ん、大丈夫。
……それよりさ……
助けてくれてありがとね。』
助けてもらわなかったら
どうなってたか…
拓真『…………俺じゃないよ。』
美姫『え?』
拓真『美姫を助けたのは俺じゃない。』
……??
美姫『拓真じゃないなら誰が助けてくれたの?』
そんな人…
一体誰が…
拓真『……………山瀬。 』
え!?
山瀬くんがわたしを?
美姫『それほんとなの?』
拓真『…あぁ。
俺が行った時にはもう山瀬が助けてくれてた。』
…正直信じられない。
だって蒼とのこと脅してくる人だよ?
そんな人がわたしを助けてくれたなんて…
拓真『だから俺はなにもしてないよ。
気づいてやれなくてごめん。』
申し訳なさそうに頭をさげる拓真。
なんで拓真が謝るの?
そんな顔しないでよ…
悪いのはわたしなのに…
美姫『拓真はなんにも悪くないでしょ?
悪いのはわたしなんだから
もう謝んないでよ…』
起き上がり拓真の顔をみる。
………震えてる…?
美姫『拓真?』
拓真『……しようかと思った…』
ん?
声が小さくて聞こえない。
美姫『どうしたの?』
拓真『……どうしようかと思った…
美姫になにかあったら…俺…』
…そんなに心配してくれてたんだ…
美姫『だいじょーぶだって。
…ほらもうこんなに元気だもん!』
元気だよアピールをしたけど
拓真『……もし山瀬が来なかったら
……死んでたかもしれないんだぞ。
俺がいればあんなことにならなかったのに…』
うつむいて今にも泣いてしまいそうな拓真を
ギュッと抱きしめた。
美姫『大丈夫だから。
わたし…死なないから…
ずっと傍にいるよ。
今までみたいに
これからもずっと一緒。
…だから自分を責めないでよ…』
いつもは拓真がわたしを慰めてくれる
だから今度はわたしが…
わたしなんかの為にいつも…
いつもごめんね。
こんな想いさせて
ごめんね。
わたしの小さな腕で
拓真の大きな体を抱きしめる。
しばらく背中をさすったりしてると
クシュッ
……ちょっと冷えてきちゃった。
拓真『…ごめん美姫。
もう大丈夫だから…
冷えてきたみたいだし
布団に入りな?』
わたしから離れ布団を敷き直してくれた。
美姫『………うん…ありがと。』
横になると
拓真『…なんで海に行ったの?』
……やっぱ聞くよね…
聞かれるとは思ったけど。
なんて言おう…
ほんとのこと言ったら
蒼のこともバレちゃうし…
やっぱ言えない。
美姫『海で散歩してたらよろけちゃって…』
思わずそう言ってしまった。
よく考えるといろいろおかしいのに。
散歩しててよろけて海に落ちるって…
あんなに深いところまでよろけるなんて
おかしいでしょ。
なんでこんな嘘ついちゃったんだろ。
わたしのバカ。
こんなの信じるわけない…よね……
拓真『ふーん……
危ないからもう1人で行くなよ?
散歩したいなら俺も行くからさ。』
…信じてくれた…?
違う。
拓真はそんなの嘘だって
気づいてる。
それでもわたしの嘘につきあってくれてる。
…なんか申し訳ないな…
拓真には隠し事なんかしたくない。
もちろんみんなにも。
…でも
今はまだ言えない。
美姫『…うん。』
そしてわたしも拓真も寝てしまった。
次の日。
今日はグループごとでハイキング。
配られた地図を頼りに
何ヶ所かある先生たちのいるテントで
問題に答えていく。
朝目を覚ますと
詩織も夏妃も柊も
若菜ちゃんも心配してくれてた。
でも一番心配してるのは
拓真。
『薬飲んだか? 』
『痛いとこないか?』
『ハイキング行ける?
やめたほうがよくないか?』
とか…
ほんと…心配しすぎだよ。
でも…
なんか少しだるいし…
熱っぽい。
そんなこと拓真に言ったら
ハイキングやめるだけじゃなく
帰らされるかもしれない。
そんなに高くないと思うし…
大丈夫。
朝ごはんも食べ準備もして
ハイキングスタート。