~拓真 side ~


いつものように帰ろうとすると

美姫『ごめんっ!今日ちょっと用があるの。』

言われた。

美姫がこんなこと言うなんて

珍しい。

何かと思い聞くと


美姫『う、うん…ちょっと…ね。
時間かかるかもだから先に帰ってて?』

と言った。

アイツと…先生と会うんだろうな…。

美姫ほんと嘘下手だな。

すごいキョドってるからすぐにわかる。

ほんとはいろいろ聞きたい。

でも…


拓真『…わかった。』

聞かずに俺は美姫と別れた。

聞いても美姫が困るのはわかってるから。


詩織『あっれ~?拓真、美姫はぁ~?』

拓真『…用があるから先に帰っててだとよ。』

夏妃『用事?』

拓真『そっ。』

詩織『一緒に行けばよかったじゃーん!』

拓真『………
なんか行っちゃいけない感じが
したからさ…。』

詩織『そっかぁ~…。』

しばらく沈黙が続く



沈黙を破ったのは…


詩織『そーだっ!ねぇねぇ!
テストまであと少しだしさ!
みんなでお勉強会やろ!』

こういう時詩織がいると助かる。

夏妃『あんたただはしゃぎたいだけでしょ。』

詩織『うっ…。
で、でも勉強も少しはやるよ?』

拓真『少しはって…
趣旨変わってんじゃん。』

夏妃『あんたどうせやんないんだから
一人でやってなさい。』

詩織『ちゃんとやるから!
それにぃ…』

とニヤニヤしながら

詩織『拓真だって美姫と一緒にいれるよ?
夏妃だって家庭科教えてもらえるよ?
それにぃ…
お泊りすれば美姫のごはん
食べれるよ~?』

拓真・夏妃『うっ…』

柊『……』

お泊り?

え、それやばくね?

拓真『ちょっと待てよ!お泊りって…』

詩織『へ?いや?』

嫌なわけないだろ。

詩織『だってさ夏妃は家庭科教えてほしい
でしょ?
で、あたしたちは美姫のごはん
食べたいでしょ?
…で拓真は美姫といたいでしょ?』

拓真・夏妃・柊『……………』

詩織『あ、それとも二人っきりのほうが
よかった?
でも二人でお泊りはだーめ♡』

こいつ…そんなにからかって楽しいか?

拓真『…っ…そんなんじゃねぇよ!』

詩織『ならいいじゃん♪
一石三鳥だよ♪』

夏妃『確かに美姫に家庭科教えてもらいたい
けど…
どこでやんの?
美姫に言ったの?
それと…
あんたが一番成績悪いんだから
ちゃんとやりなさいよ? 』

詩織『場所は美姫っち!
まだ言ってないから拓真お願いね!
わーかってる!
じゃあ土曜日に美姫っちね!』

美姫がいないのに美姫っちに泊まる計画を

どんどん進めてく詩織。

…ま、いっか。

正直めちゃくちゃ楽しみだし。



家に帰り晩ご飯を食べたあと…

母さん『拓真~~!!
美姫ちゃんちにこれもってって!』

と晩ご飯の残りをタッパーにいれて

俺に渡してきた。

拓真『…わかった。』

時計を見ると20時をまわってる。

さすがにもう帰ってきてるだろ。

俺は鏡の前で髪や服を整えて

美姫の家へ向かった。



…あれ?

美姫のアパートの前に車が止まっている。

中から誰か出てきた

それは…

拓真『…み……き?』

それは美姫だった。

運転席には

紺野蒼。

美姫は俺たちに見せる笑顔とは違う…

女の…

とても幸せそうか顔をしていた。

美姫は車が見えなくなるまでずっと…

ずっと手を振っていた…

なんとなくわかっていた。

アイツと会っていること…

でもいざ目の当たりにすると…

ダメだな

俺はそこからしばらくの間動けなかった。


帰ろう。

そう思った。

けど…

俺の右手には

母さんに頼まれた紙袋。

それにお泊り会のことも言わないと…


よし、行くか…


ピンポーン


美姫『はぁ~~~い。』

元気良く返事をして出てきた。

美姫『あれ拓真?どうしたの?』

いつもの美姫だ。

拓真『……これ。
母さんが持ってけって。』

紙袋を渡すと

美姫『わぁ~いつもごめんねぇ。
おばさんにお礼言っといてくれる?』

拓真『ん、わかった。
それと…
土日空いてる?
詩織がみんなで勉強会やろ!
って言ってんだけど…
美姫っちでいい?
なんか泊まりとか言ってんだけど…。』

美姫『お勉強会?
いいねぇ♪
しかもお泊りって
楽しそうっ!!
もちろんおっけーだよっ!』

拓真『よし!じゃあみんなで来るな。
勉強もいいけど無理するなよ?』

美姫『はーーい!
じゃあおやすみ~。』

拓真『おやすみ。』



俺いつも通りにできてたよな?

ちゃんと笑えてたよな?

お前の前ではいつもの俺でいたいから…



…今日は星が見えねぇな…

美姫と星に願ったあの日から俺は毎日のように

星を見ては美姫のことを願っている。


今日に限って見えねぇのかよ…

お泊り会が楽しみな気持ちと

さっきの紺野と美姫を見た複雑な

気持ちを抱え暗い夜道を歩いていった。