~美姫 side ~

テストまで残り一週間になった。

拓真『美姫帰ろーぜ。』

いつものように帰ろうとする拓真。

でも今日は一緒に帰れない。

だって…

これから先生のとこに行くから。


美姫『ごめんっ!今日ちょっと用があるの。』

拓真『用?』

美姫『う、うん。ちょっと…ね。
時間かかるかもだから先に帰ってて?』

拓真は不思議そうな顔をしたけど

拓真『…わかった。
詩織たちにも言っとくな。
帰り気をつけろよ。
なんかあったら言えよ?』

なにも聞いてこない。

たぶん拓真にはわかってる。

疑うどころか心配してくれる。

美姫『はぁい。ありがとね。』

拓真『じゃあな。』

拓真と別れわたしは保健室に向かった。


ガラガラガラ

美姫『先生♪今いい?』

蒼『ん?どうした?』

先生はパソコンから視線を外して

こっちを見た。

…メガネ姿だ♡

やっばかっこいいなぁ~

とみとれていると

蒼『美姫?どうしたの?
調子悪くなっちゃった?』

わたしの傍に来て目線を合わせてくる。

先生の顔が…

近いよ…。

美姫『違うの。
勉強教えてもらおうと思って…。』

と教科書とノートを出す。

蒼『勉強?』

美姫『そう!保健あるから…。
体育できない分他ので頑張りたいの!』

蒼『へぇ~。えらいじゃん。
てか美姫さ保健の成績いいじゃん。
他の苦手なのやったほうがよくない?』

それじゃここに来た意味ないよ…。

先生に教えてほしいの!

美姫『いいの!
苦手なのより得意なの頑張りたいの!』

蒼『保健頑張ってくれるのは嬉しいけど
他のも頑張れよ?』

椅子に座って教科書を広げている

わたしの後ろから顔を覗きこんでくる先生。

美姫『はぁ~い。ねぇ先生?』

蒼『んー? 』

美姫『テスト頑張るから、
他の教科も頑張るから
終わったらごほうびくれる?』

蒼『ごほうび?
てか頑張るのあたりまえ!』

美姫『ぶーー!
いいじゃーん!
ごほうびあったほうが
モチベーションあがるのに~。』

すねながらテスト勉強をやろうとすると

蒼『いいよ。 』

美姫『え?』

蒼『ごほうび!
そのかわりいい点数とったらな?
そうだなぁ~
全教科平均点以上+保健90点以上は?』

え~全教科かぁ…

数学と英語やばいんだよなぁ…

蒼『保健、俺の教科だし教えてるんだから
それくらいいいだろ?』

そりゃ先生の教科だから頑張りたいけど…

悩んでると

蒼『それがクリアできたらごほうび。
誕生日お祝いしてあげる』

!?

美姫『え、待って先生!
誕生日って…』

蒼『7月7日。七夕の日だろ?』

覚えててくれたんだ。

前に1回しか言ってないのに…。

それだけでもすごいモチベーションあがる。

蒼『それでいい?』

あたりまえだよ。

ていうか…

想像もしてなかった…

こんな嬉しいこと

美姫『うん!もちろん!』

蒼『これで頑張れるな?』

頷くわたし。

蒼『よし。お勉強はじめるか。』

先生とのお勉強がはじまった。

隣の机に座って

ケガの応急処置の仕方、

病気の予防法などなど…

あっという間に楽しい時間は過ぎて…

蒼『…もうこんな時間か…』

今は7時45分。

ここから外はもう暗い。

こんな時間に一人で帰ることなんて

めったにないからちょっと怖い…


蒼『もう遅いし送ってくよ。』

美姫『え…いいの?』

蒼『もちろん。
てゆーか、この時間に女の子一人で
帰らせれないでしょ。』

といい送ってもらうことになった。



やった。

先生の車だ♡

男の人の車に

しかも助手席に座るなんてはじめて。

ドキドキする。

先生の横顔を見る。

あぁ、今わたし幸せだなぁ。

大好きな人と二人っきりで

大好きな人の車に乗ってる。

蒼『どうした?俺の顔なんかついてる?』

美姫『な、なんでもないっ!』

やばっ

みてるのバレちゃった

蒼『そっ。今日頑張ったな。』

美姫『ん?』

蒼『テスト勉強!
あんだけやれば大丈夫だろ!』

美姫『んーあんま期待しないでよ?』

蒼『なんで?
目標クリアしないとごほうびなしだよ?』

意地悪く笑う先生。

美姫『ずるい!
お祝いくらいしてくれてもいいじゃん』

蒼『だーーめ!
約束だろ?
俺と美姫の。
目標クリアしなかったらなしね。』

いじわる。

でも約束って…

「俺と美姫の」っていいね。

ていうか今更だけど…

先生さっきからずっと

美姫って呼んでくれてる。

なんか距離が縮んだみたいで嬉しい。

美姫『…わかった。頑張る!
だから目標クリアしたら約束守ってね!』

蒼『ははっ。わかってるよ。』


美姫『あ、先生そこ。わたしの家。』

蒼『お、ここか。一人暮らしだろ?
戸締りとか気をつけろよ?』

美姫『はぁい!先生、今日ありがとね!』

蒼『おう!じゃあな、おやすみ。』

美姫『おやすみなさーい!』

そう言って先生は帰って行った。

わたしは先生の車が見えなくなるまで

手を振っていた。


そのとき誰かに見られてるなんて
思いもしなかったんだ…