~美姫 side~


保健室の前で何回も深呼吸し

ガラガラガラ

ドアを開けると


蒼『…お、桜空。』

美姫『先生…これ!』

緊張してる手でクッキーの入った箱を渡すと


蒼『何これ?』

美姫『クッキー!さっき調理実習で作ったの。』

蒼『俺にくれんの?』


当たり前でしょ。

先生のために作ったんだから。


美姫 『いらなかったらいいよ。』


また余計なこと言っちゃう。

素直になりたいのに…


蒼『ありがとな。 ありがたくもらっとく。』


受け取ってくれた。

でもなんか困ってるような…
悩んでるような…


美姫『どうしたの?』

蒼『いや、食べたいんだけど
綺麗にラッピングしてあるからあけるのもったいねぇなって…』


先生こどもみたい。
でもかわいい。

美姫『ふふっ。そんなこと気にしてたの?
普通にあけて食べていいのに。
早くしないと冷めちゃうよ?』

蒼『笑うなよ。…それもそうか。
じゃあ…いただきます。』

美姫『いただいちゃってください。』


どうかな…?


蒼『…うまっ。ほんとに桜空が作ったの?
売りもんみたいじゃん。』


よかった。
気に入ってくれたみたいで。


美姫『ほんとにおいしい?』

蒼『うん。食ってないの?』

美姫『うん。』

蒼『ほら。』


先生がわたしの口にクッキーを入れてきた。


美姫『んっ…ちょっと先生急に…おいし…!』

蒼『だろ。こんなのつくれるなら桜空はいいお嫁さんになれるな。』


先生…わたしはね
あなたのお嫁さんになりたいの。


美姫『そんなことないよ。
こんな病気の子お嫁さんしたい人なんていないよ。』

蒼『そうか?お前モテそうじゃん。』

美姫『言われる事もあるけど全部断ってるもん。病気の事知ったら 好きにならないよ。』

蒼『ふーん…でも本当にお前の事好きな奴なら
気にしないんじゃないか?』


そんな人がいればいいけど…


美姫『ねぇ先生?
先生はわたしみたいな病気の子どう思う?』

蒼『俺は気にしないけどな。
お前だって好きでなったんじゃないだろ?
俺はそんな小さい男じゃねぇよ。』


その言葉が嘘でも嬉しかった。


蒼『……さて。
こんないいもんもらったしお礼しないとだな。
何がいい?』


なにそれ…

すっごい嬉しいんですけど。

ていうか急に言われても…
そんな簡単に決められないよ。

しばらく悩んでると…

一枚の紙切れを渡して


蒼『今じゃなくていいよ…これ俺の連絡先。
決まったら連絡して。…みんなには内緒な?』


え…これ先生の?

いいの?

わたしが固まってると…


蒼『どうした?』


はっとし我に返った。


美姫『う、ううん!なんでもない!わかった!
決まったら連絡する!』

蒼『おう。お前のも教えて?』

美姫『うん!』


急いでケータイを出そうとするが

中々見つからず…
やっと見つかったと思っても
緊張で手が動かない。

それでも
なんとか連絡先交換完了!

ケータイの画面には…
「紺野蒼」の文字。

ニヤけてしまいそう。

そんな時

♪キーンコーンカーンコーン♪

授業の終わりのチャイム。

みんなが帰ってくる。

もう行かないと。


美姫『じゃあ行くね。』

蒼『じゃあな。気をつけろよ。』


保健室を出てさっきの事を思い出しポッケの中のケータイを握りしめながら教室へ行った。