~美姫 side~
山瀬くんを連れ部屋に入ると
山瀬くん『…何?』
「何?」じゃないよ。
美姫『何でみんなの前であんな事言ったの?』
山瀬くん『何でって…
お母様に挨拶しとかないとだし。』
いやいや
「当たり前」みたいな顔してるけどそうじゃないでしょ。
美姫『おばさん本気にしちゃうじゃん。』
おばさんもそうだけど
夏妃もいるんだよ?
わたしが夏妃だったら
好きな人が他の人を好きなんて聞いたら嫌だよ。
夏妃にそんな思いさせたくない。
だからおばさんの前で…
夏妃の前であんな事言わないで。
山瀬くん『別にいいじゃん。』
大した事じゃないと言うようにサラッとそんな事を言った山瀬くん。
だから…
全然よくないんだってば。
そう言い返そうとした時
山瀬くん『だって俺本気だし。』
またも軽い口調でそんな事を言った山瀬くんに
美姫『…いい加減からかわないでよ。』
山瀬くんの軽さと
わたしばかり振り回されてる感じにやっきりし
少しキツめに言うと
ドンッ…!
ドアに背中があたり
山瀬くんがわたしの手を握っていた。
美姫『……!!?』
何が何だかわからずパニクっていると
山瀬くん『本気だって言ってんじゃん。
まだわかんないわけ?』
真剣な表情と強気な言葉。
いつもと違う山瀬くんに少し体が固まってしまった。
山瀬くん『どうしたらからかってないって…
本気だってわかってくれんの?』
強気な言葉を言ったかと思えば今度は弱々しく
寂しげな顔でそう呟きみつめてきた。
その顔をみたら何も言えなくなってしまった。
だって
山瀬くんの気持ちに気づいてたから。
最初はからかわれてるんだって思ってた。
でも話していく内に
一緒にいる時間が増えるごとに
わたしの事を想ってくれてるのに気づいた。
それでもわたしは
美姫『…ごめんね。』
それしか言えなかった。