~美姫 side~
おばさん『洗濯物取り込んで来るから2人に任せていいかしら?』
夏妃『え…?
私に任せていいんですか!? 』
おばさん『ふふっ…美姫ちゃんがいるから大丈夫よ♪』
そう言っておばさんは洗濯物を取り込みに行き
夏妃と2人で夕食を作る事になった。
さてとまずは…
と準備をしようとしていると
夏妃『ねぇ…こういう時ってどうすればいいの…?』
さっそくですか。
美姫『作ればいいんだよ。』
夏妃『それくらいわかるよ。』
美姫『ふふっ…だよね。』
2人して笑って夏妃の緊張も少しはほぐれたみたい。
料理中の夏妃は不器用だけど
いつも冷静な夏妃がオロオロして頑張っている
姿がかわいくて応援したくなる。
この姿を俊にもみせてあげたいな…。
夏妃『私は何すればいい?』
そんな事を考えていると夏妃に話しかけられてハッとなった。
えっと…
おばさんが
「今日は大勢いるからカレーとサラダとカツを作ってカツカレーにしましょっ♪」
って言ってたから…
美姫『じゃあ…野菜切ってもらっていい?』
夏妃『うん!』
ふふっ…なんか子どもみたいでかわいい。
話しながら作業してると
夏妃『…今日何かあった?』
急にあの事を聞かれ包丁を持つ手が止まってしまった。
どうしよう…
いつも心配してくれてる夏妃には言った方がいいと思う。
でも…何て言えば…
夏妃『言いたくないなら言わなくていいよ。』
わたしが困ってるのを察してくれたのかそう言ってくれた。
その心遣いが嬉しかった。
美姫『ううん…大丈夫。あのね…』
と今日あった事を話すと
夏妃は頷きながら最後まで聞いてくれた。
夏妃『そっか…そんな事があったんだね。
…で、もっと話聞きたいんだけど…これ……』
?…何?
夏妃の手元をみると
じゃがいもの皮を分厚く剥いちゃって…
カレーに使う部分がほんの少しに…。
目を離した隙になんでこんな事に…
話しながら料理はハードルが高かったか…。
じゃがいもは溶けちゃうから大きくしたかったんだけど…。
しょうがない。
美姫『ここはわたしがやるから夏妃は…
他の野菜…そう!レタスとミニトマトのヘタ取って。』
これなら大丈夫だよ…ね?
レタスは手でちぎればいいし
ミニトマトもヘタとるだけだし。
夏妃『わかった。でもそのじゃがいもどうするの?』
分厚い皮と小さな身を心配そうにみている夏妃。
美姫『フリットにするから大丈夫だよ。』
夏妃『…やっぱすごいね。』
夏妃はサラダを
わたしはカレーとカツの下準備をしていると
おばさん『夏妃ちゃーん!
ちょっとこっち来て~!!』
夏妃『??わかりましたー!
ちょっと行ってくるね。』
おばさんに呼ばれ夏妃が行ってしまい1人でやることに。
もとから1人でやってるようなものだけど…。
お肉と野菜を煮て
カレールーを入れてグツグツ煮込み
カツの下準備をしていると
俊『…カレー?』
後ろから俊が近づいてきた。
美姫『うん。後サラダとカツね。』
俊『それでカツの下準備してるんだ?』
美姫『そういうこと。』
しばらく沈黙が続いてなんか気まずい…。
しかもずっと視線を感じてやりにくい。
美姫『なに?』
俊『んー…ポニーテールにエプロンもいいなと思って。』
なにそれ。
急にそんな事言われたら恥ずかしくなっちゃう
よ…。
美姫『…おじさんみたい。』
俊『君の彼氏の方がおじさんでしょ。』
ムッ…
いつもなら
「そんな事ない」って言えるのに
今日は
今日だけは言えない。
美姫『そうだね。』
俊『…聞いたよ。先生の事。』
何だ…知ってたんだ。
俊『何で拓真くんなの?』
ん??
美姫『何が?』
俊『何で拓真くん呼んだの?』
何でって…
美姫『信じてもらう為だけど?』
俊『…それなら俺でいいじゃん。』
美姫『…そんな事言われても困る。』
拓真じゃないといけない理由はなかった。
でも何でかわかんないけど拓真しか出てこなかったの。
少し不機嫌そうな俊はほっといて
カツを揚げようとすると
俊『できんの?』
美姫『できるよ?』
ほんとは油が跳ねそうで怖いからなるべくしたくないんだけど…。
でも…やんないと。
お肉を油の中に入れると
ジュッ
美姫『あっ…つ……!!』
油が跳ねて手にあたってしまった。
俊『美姫ちゃんっ!!大丈夫!?』
急いで傍に駆け寄り水道の水で冷やしてくれた。
美姫『あ、ありがと…ってあれ…?』
今「美姫ちゃん」って言った?
最近ずっと呼び捨てだったのに…
どうしたんだろ?
そんな事を考えていると
俊『…危ないからもうやめなよ。』
美姫『今はたまたま油断しただけ。もう大丈夫だよ。』
今のわたしは俊に抱きしめられてる感じ。
だから…
こんなとこ夏妃にみられたら困る。
俊『大丈夫じゃないでしょ。
女の子何だからそういうの気にしないとダメだよ。』
わたしの手を強く握り水にあて続けている俊。
ほんと…
女の扱いうまいな。
モテるのがわかる。
こんな風にされたら好きじゃなくても好きになっちゃいそうだよね。
俊『今ので惚れちゃった?』
美姫『違います。』
今の訂正。
やっぱ好きになんかならない。
かっこいいし優しいけど…
大好きな夏妃の好きな人だもん。
俊『そんなはっきり言わなくてよくない?』
だって…ねぇ?
こういう人にははっきり言わないと。
美姫『それよりさっきどうしたの?』
俊『何が?』
美姫『珍しく「美姫ちゃん」って呼んだから…』
俊から呼び捨てでいいかって言ってきたのに…
急にどうしたんだろ?
俊『あー…言っちゃったかー…』
恥ずかしそうに頭をかいている俊。
俊『俺さーずっと「美姫ちゃん」って呼んでたから癖になってたんだよねー。
でも俺だけ違うのって何か嫌だったからさー。
だけどちょーっと無理してたのかも。』
後ろから抱きしめられてるような体勢のまま
そんな話をしてた。
美姫『好きな呼び方でいいよ?』
別に呼び捨てだから仲がいいとか
呼び捨てじゃないから仲良くないって訳じゃないんだから。
俊『じゃあ…付き合ったら呼び捨てにする。』
…はい?
俊『だからそれまで美姫ちゃんも今までと一緒でいいよ。
どーしても名前がいいなら名前でいいけど☆』
えーっと…
よくわかんないんだけど…
とりあえずわたしは「山瀬くん」でいいってことだよね。
わたしも何か違和感あったし…。
「俊」って「柊」と似てて言い間違えちゃうから
「山瀬くん」の方が助かる。
美姫『わかった。』
と言う事で結局呼び方は最初に戻った。
ていうか…
美姫『もう大丈夫だよ?』
ずっと冷やしてたからもういいと思うんだけど…
山瀬くん『だーめ。
あとに残ったら大変でしょ。』
心配してくれるのは嬉しいけど…
距離が近い。
夏妃がみたら何て思うか…
そう思っていると
ビシッ!!
夏妃『あんた美姫に何してんのよ。』
来ちゃった。
美姫『これはその…』
こうなった理由を説明すると
夏妃『やけど大丈夫なの?』
美姫『う、うん。』
あれ?
いつもの夏妃だ。
「私があいつの事好きなの知ってるくせに」
って言われると思った…。
でも冷静に考えたら夏妃はそんな事言わないか。
山瀬くん『俺が冷やしてあげたからね☆』
夏妃『はぁ?何言ってんの。
大体あんな体勢でする必要ないでしょ?』
…怒りの矛先が山瀬くんに…。
2人をボーッとみてると
♬...♪*゚♬
ケータイの音が鳴り画面をみると
「紺野 蒼」。
蒼…!?
何で…
しばらく黙って画面をみつめていると
夏妃『紺野先生…?』
美姫『…うん。』
夏妃『出ないの?』
美姫『……』
出た方がいいのかもしれない。
出てちゃんと話した方がいいって頭ではわかってる。
でも…
今話してもさっきみたいになる気がして…
まだ話したくない。
夏妃『美姫?話したくないのはわかるけど
ちゃんと話し合った方がいいと思うよ。
美姫も自分の気持ち隠さないで全部打ち明けたらいいんじゃないかな。』
夏妃…
美姫『でも…まだカツ揚げてる途中だし…』
と言い訳を探していると
山瀬くん『それなら俺がやるからだいじょーぶ
!こうみえて料理得意だから☆
それに…美姫ちゃんにやらせてまたやけどされても困るしね。』
料理できるんだ…意外。
…じゃなくて
これじゃ電話に出ない理由がないよ。
夏妃『美姫…』
目で訴えてくる夏妃。
美姫『わかった。話してくる。
…後で話聞いてね?』
夏妃『もちろん。』
山瀬くん『俺の胸ならいつでも貸すよ☆』
美姫『ふふっ…ありがと。』
山瀬くんにツッコミを入れている夏妃をみて
ケータイを強く握り締め階段を上がり昔使っていた部屋に入った。