~美姫 side~
『2年1組の桜空美姫さん、至急校長室に来てください。』
いつものメンバーで帰ろうと荷物をまとめているとそんな放送が入った。
???
なんだろ…?
わたしなんかしたっけ?
詩織『美姫なにしたの!?』
美姫『何もしてないけど…
とりあえず行ってくるね。』
何の話かわからないけど…。
教室から校長室まではそんなに遠くないのに
今だけはすごく遠く感じる。
そんな不安な気持ちと重い足取りで校長室に向かった。
コンコン。
美姫『失礼します。』
校長室の前まで来てノックし中に入ると
中には
校長先生と蒼がいた。
え!?蒼!??
なんで蒼が…?
でも蒼がいる事でいい話じゃない事はわかった。
…バレちゃった?
校長室に入るなり校長先生の口から出たものは
わたしと蒼の事だった。
…やっぱり
ていうか…
匿名の電話やFAXってなんなの…!?
誰がそんなこと…
当然蒼は否定したみたいだし
もちろんわたしもほんとの事言うつもりはないんだけど…
嘘へたなんだよなぁ…
でもこれがバレたらどうなるか…
それを考えればどんな嘘でもつける。
だから苦手な敬語といつもの対教師用の
「営業スマイル」で校長の質問に答えた。
でもなんと答えても
『うーん…』とか
『桜空さんを信じてない訳ではないけど…
火のないところに煙は立たないって言うからねぇ…。』
と中々信じてもらえない。
こうなったら…
美姫『わたし…付き合ってる人いるので。』
そう言うと
校長『!?』
と驚いているのがわかりやすく顔に出ていた。
蒼も顔は見れないけど驚いているのがすごく伝わってきた。
校長『…その付き合ってる人は?』
どうしよう…
「付き合ってる人がいる。」
と言えば話が終わると思ったのに…
…しょうがない。
100%信じてもらうには…
これしかない。
美姫『…同じクラスの五十嵐拓真です。
信じてもらえないなら本人に聞いてもらっても構いません。』
校長『…わかりました。
では今から来てもらいましょうか。』
そう言って他の教師に拓真を呼びに行かせた。
さっきはあんな事言ったけど
拓真とはただの友達で付き合ってなんかない。
…これは賭け。
拓真がわたしと付き合ってると言ってくれれば
わたしの勝ち。
付き合ってないとほんとの事を言えばわたしの負け。
もし拓真がほんとの事を言ったら
今までの嘘がバレてわたしと蒼は…。
でも今のわたしにできることは
拓真を信じることだけ。
拓真が来るまでの間
わたしの心臓は蒼や校長にも聞こえるんじゃないかと思うほどドックンドックン大きくなっていた。
手や足が震えそうになるのも抑え
必死に冷静を保っていた。