「し、失礼しまーす」


さっきのプチ恥ずかしい出来事がまるでなかったかのように、私は保健室の扉を開ける。


「あら、深井さん。

…と浅井。

どうしたの?」


ひいきが激しいと噂の保健の右寄智佳子(みぎよりちかこ)先生が、

私には優しい声で、浅井君にはまるで地獄からの魂の催促が来たような、そんな感じの声で言う。


とりあえず、この先生は私には良くしてくれているが、浅井君はゴミのように扱うのだ。


「ちょっとさっき咳が止まらなかったんで…。

後さっきから顔が真っ赤だし」

「お前には聞いとらんわ、このゴミクズが」

「…」

「深井さん、どうしたのかしら?

熱があるのかしらね~、ちょっと体温測ってみようか」

「あ、はい」


そう言って、私は先生から体温計を受け取った。