いろいろ考えていると、キィっとドアが開いて。


「涼先輩!!」


そこには涼先輩がいた。


「広瀬!!……彼氏か?」


先輩は根岸クンをチラッと見ると、そう言った。


はい。


そう言えばいいのに、言えなかった。


私は先輩が好きだから。


私が黙っていると、根岸クンが口を開いた。


「……今、別れ話してるところです。だから……今はただの友達です。」


驚きで声が出なかった。


「えっ……あっ、何か邪魔してごめん。」


そう言って去っていく先輩を見送って、やっとの思いで聞き返した。


「どういうこと……?」


「そういうこと。もう、飽きたんだ……。よく考えればそこまで好きじゃなかったし……。だから別れる。」


待って…


「えっ……」


「じゃあな。」


行かないで…!!


私を置いていかないで…


私を嫌いならないで…


私を一人にしないで…


優しい子になるから。


ちゃんと言うこと聞くから。


もっといい子になるから。


だから…


私から離れていかないで…


傍にいてよ…


引き止めたいのに、何も言葉が出なかった。


バタンというドアの音だけが、虚しく頭に響いていた。