そんなことを思いながらボーッと立ち尽くしていると、後ろから突然声がした。

「広瀬?」


「……!!先輩!?何でここにいるんですか?」


振り向くと、そこには涼先輩がいて。


「ちょっと忘れ物を取りに。まだ開いてるか?」


「あっ、はい。今ならギリギリ開いてると思います。」


驚きと緊張とで、上手く口が回らなかった。


「そっか。ありがと。」


「いえ。じゃあ、さようなら。」


「えっ、ちょっ……待って。」


「へ?」


「一人で帰んのか?」


「そうですけど。」


「迎えに来てもらえば?遠いだろ、お前ん家。」


「迎えに来てもらうほど遠くないし。」


呼んだって来てくれるかどうかわかんないし。


「送ってこうか?」


「いえ、そんなわざわざ。本当、大丈夫ですから。」


送ってってほしいけどお姉ちゃんがいるし。


「そっか…。気を付けろよ。」


「はい。」


そう言って、私は先輩の後ろ姿を見送った。