その後の記憶がない。
ただ、気付いたら保健室にいて。
先輩の心配そうな顔がすぐに目に入った。
「先輩…」
「体、まだダルい?」
「…平気です。」
「……何で嘘つく?平気なはずないだろ。38℃だぞ?」
「…じゃあ、何て言えばいいんですか?」
少し黙った後、私は呟くように言った。
「えっ?」
「『平気』意外に、何て言えばいいんですか?」
「何って…。ダルいとか、辛いとか。いろいろあるじゃん。」
「…言えないです。」
「何で?もっと素直になった方がいいと思うけど。」
「言って…辛いとか言って、困った顔されるくらいなら言わない方がいい。」
「お母さんのこと?困った顔なんてしないよ。菜々も言ってただろ?看病してくれるって。」
「………」
違うよ。
優しいのはお姉ちゃんだから。
私とお姉ちゃんとでは、全然違う。
「ごめん…」
「えっ?」
「何も知らないのにこんなこと言って…。さっきも、急に怒鳴ったりして。お前にだっていろいろあるんだよな…」
何て言ったらいいのかわからなかった。
ただ、嬉しかった。
私の何かをわかってもらえたわけじゃないけど。
ちゃんと私のことを見てくれたようで、嬉しかった。