《2》


「うわー・・・、どうしよう。見ちゃったよ・・・。というか、何あれ」

朝日に照らされた廃工場。
つい先ほどまで外国人のような人影と生き物と影が居た場所だ。
学生服に大きめのスクールバッグを肩にかけたヴォルハイド・イヴァニシアは困惑の表情を浮かべたままどうすることかと悩んでいた。

普通、髪の毛を赤に染めたら違和感が残るものだが、さっきの人影にはそんな違和感が無かった。
暗闇の中でも映える真紅の髪に思わず見とれてしまったほどだ。
自分のくすんだ灰色の髪とは何処か違う感覚がある。
瞳だって紅暗色で綺麗だった。
・・・だけど、その瞳には何を映していたのか分からぬほどに感情がこもっていなかった。
実際は“ように見えた”だが。

「でもさ、やっぱりあれはおかしいって。だって空から降ってきたし、地面から湧いてきたし」

はあ、と浅いため息をつき自分にあれは夢だったのだと言い聞かせる。

きっと夜通しの悪趣味な鬼ごっこで疲れてしまったのだろう、と。