現実世界の私は、イルミネーションがきらびやかに輝くクソ寒い休日の街中を、両手にコンビニと薬局の袋を携えてよろよろと歩いている。
そこいら中に湧いて出ているカップルを視界から抹殺するのに骨が折れる。
脳内では教授と生徒から変わって、横スクロール型のシューティングゲームよろしく、私にしか見えないビームで去来する宇宙船団(カップル軍団)を爆破している。
なんと卑屈な、と思われるかもしれない。
しかし三十路直前の私のハートは、こんなどうしようもない遊びをしなければ荒んでいってしまうほどに弱っているのだ。どうか勘弁してもらいたい。
「くっそ……高崎め……」
私は、私を悩ます悪魔の名前を呪いと共に呟いた。
思い起こせば小一時間前。
やりたくもない休日出勤の仕事がそろそろ片付くかという時に、悪魔の宣告は突然やってきた。
銀河を統べんと暗黒面に堕ちた全身真っ黒なあの人のテーマ曲が私の携帯から流れだし、それが悪魔からの死の宣告であることを告げている。
『風邪引いた。なんかあったまるモンと薬買ってこい。一時間以内、時間厳守』
わなわなと震える手で恐る恐る開いたメールには、計34文字で端的にそれだけ書かれていた。