二件目の物件を下見し終わると日は大分傾きかけ時計を見ると5時を20分も過ぎていた。

三件目の物件を見に行くには少々時間的に難しかったので、僕は須藤をビジネスホテルのある駅前へ送り届ける事にした。

騒がしかった行きとは違い須藤は黙々と助手席でノートパソコンを膝の上に起用に固定させながらカタカタと打ち鳴らし続けていた。


『吉岡さん、会社戻るんですかぁ?』


須藤は一通りの仕事が終わったのかノートパソコンを閉じて、自分のカバンに戻しながら聞いてきた。


『・・・いえ、今日はこのまま直帰です。』


『だったら、ちょっと付き合いません?私出しますからぁ・・・』


須藤は初めて会った時の様なテンションに戻り、グラスを口の前で傾けるジェスチャーをしながら聞いてきた。

普段なら、こういったお誘いには適当な理由を並べて乗らない僕だったが、息子の誕生日を台無しにしてしまった罪悪感からか、割り勘の条件付で了承した。

須藤は僕の了承を得ると先程よりも更に高いテンションで、またお喋りを始めた。