『奥さんと何か?』
僕は先程見た、声を荒げる須藤に少し困惑した為か、珍しく須藤に質問した。
僕の方から言葉を掛けるのは今日の数々の会話の中で食事の事を聞いて以来初めてだった。
『今日、息子の2歳の誕生日なんですわ・・』
妙にテンションの低い声で須藤は僕にまた『違った須藤』を見せた。
僕は須藤の言葉に何を言ってやればいいのか迷ったが、結局何も言わずに黙って頷いた。
須藤はそれを見て『しょうがないでしょう。』といった感じの苦笑いを見せた。
実の所を言ってしまえば現場確認の日を今日に指定したのは僕だ。
今回須藤の会社で購入を予定している物件は4件程あり全部見学するとなると2日か3日はかかる。
僕は土曜日に仕事がずれ込む事を恐れ、日取りを今日からに指定した。
『会社があって今の生活があるんですから・・・息子も大きくなったらオレの苦労をわかってくれますよ。』
須藤に少し罪悪感を感じている僕に、須藤はため息混じりで呟いた。
僕は須藤の言葉に忙しかった父の事を思い出した。
そして須藤の言葉に納得しつつも、何処か府に落ちない気持ちで仕方無かった。
彼らは奴隷の様に思えた。
僕はどうなんだろう・・・