定食屋を離れて20分程の場所に僕は須藤を運んだ。

現場に着くと須藤は急に大人しくなり、大袈裟な荷物の中からデジタルカメラを取り出し、僕が先にFAXしておいた資料に再度目を通した。

現場の建物は築5年程の、まだ新しい店舗だった。

営業していた時に二度程、明子と来た事がある。

この辺りにしてはセンスの良いドリンクのセレクトと間接照明を多様した店内に客数もそこそこで賑わっていた様に感じたが、実情は違っていたらしい。

僕は須藤を先導し店内に入り暗がりで電源盤を探す。

主電源を入れると『ボン』と響く様な音を立てて、まるで光がリレーして行く様に間接照明が点灯した。

店内に光が戻ると、店の中に人だけが消えてしまった様な空虚な空間が僕の前に広がった。

須藤は黙ったままリストを片手に店内を見回り始めた。

リストと実物を見比べて一人黙々と頷きながら店内を物色する彼は、とても先程までの須藤と同一人物とは思えなかった。