部屋を出て駐車場に向かい、車に乗り込むと車の中は既に夏の朝日に熱せられていた。
ムワっとする車の窓を開けクーラーを全開にする。
間も無く戸締りを終えた明子が車に来た。
『・・・今日も暑いね。』
『あぁ・・・夏だからな。』
『早く涼しくなると良いのにね。』
明子との会話の中で僕は既視感を覚える。
そしてすぐに夏恵の事を思い出す。
夏を愛する夏恵を思い出す。
『駅までで良いよ。』
『いや、会社の前まで送るよ。』
『大丈夫だよ。』
駅までで良いと言う明子を駅まで送り、僕はそのまま会社へ向かう。
明子はいつもと変わらない素振りを装っている様にしか、僕は感じる事が出来なかった。
僕もいつもと変わらない僕を装っていたから、そう感じているのかも知れない。