明子がオニオンスープを運んでくる。

僕はただ黙々と食事を続ける。

明子は何も言わず僕を時折見つめながら食事をする。


『トモユキ・・・』


『・・・ん?』


『・・・土曜日大丈夫?誕生日?』


明子はベーコンエッグをフォークで一口大に千切りながら僕の顔を覗き込む。


『・・・仕事になるかも知れない』


僕は明子の方を見ずに応える。

明子は千切ったベーコンを口に入れながら『じゃぁ仕方ないね』と言うように何度か頷いた。

僕は明子に嘘をついた後ろめたさをコーヒーで流し込もうとする。

夏恵が現れなければ僕は去年の様に明子と誕生日を一緒に過ごした事だろう。

だが今の僕は明子と幸せな時間を過ごす事よりも夏恵との刹那な行為に胸を躍らせている。