僕は幸せそうに過ごす明子に『理由』を話すつもりは無い。

明子が僕を理解している様に、僕も明子を理解している。

明子がこんな顔をしている時に望んでいる事も勿論知っている。

だが明子は自分の望みを口にする事が無い。彼女はそんな女性だ。

僕はそんな彼女を愛していたし、彼女に何度と無く心を救われた。

僕らの将来を考える事もしばしばだった。

だが今の僕の心は一向に癒される事が無く相変わらず酷く疲れている。


あんなに愛した明子といるのに・・・


居酒屋を出ると、いつもの様に僕達は僕の車で、僕のアパートへ向かった。

途中コンビニに寄って、僕はタバコと缶ビールと缶コーヒーを、明子は切れていた洗顔料と500mlのウーロン茶を買った。

いつもと変わらない買い物をして、いつもと変わり映えしない僕のアパートに着いた。

ただ違うのは、いつもならレンタルビデオ屋に寄りたがる明子だったが、僕の疲れを心配してかレンタルビデオの言葉は出てこなかった。