僕の『アネモネの騎士』は六つ目のボタンを外すと、シャツを大きく開いて僕の胸に顔を埋めた。

そして僕の肩の後ろに無理矢理手を回して、僕の中に本当に埋まろうとしているかの様に深く抱きついてきた。

僕はそんな夏恵の頭を優しく撫でる。

夏恵の髪は夏恵の体の様に柔らかく、そしてしなやかだった。

その一本一本が深いブルーと淡いオレンジ色の窓から射す光を受けて輝いていた。


『・・・このままがいい・・』


夏恵は相変わらず僕に深く埋もれたまま切なげに言葉を吐いた。

僕は夏恵の言っている事が、いったい何の事なのか分からなかった。

ただ、夏恵がこのままがいいと言うなら、僕はこのままでも良かった。

夏恵の中に誘われる事なく。

少し残念な気持ちこそあれ、二人このまま過ごすだけでも僕の心は満たされる気にさえなった。

『夏恵がそう言うなら・・・』と言い掛けた時に僕の口を塞ぐ様に夏恵が唇を寄せてきた。

夏恵は深いため息を織り交ぜながら舌を絡ませる。

僕の脳は一瞬にして熱を帯びる。そして先程の決心など消し去ってしまう。