『・・・いい名前だね』
夏恵はホテルの看板を見て悪戯に笑いながら言った。
『・・・ん?ホテルサマータイムぅ?』
『・・・そうサマータイム』
『そうかぁ・・・でも冬はどうすんだろ・・・』
『・・・いいのよ冬は・・・』
僕の無粋な答えに夏恵は少し腹立たしげに僕をいさめる。
僕はホテルと言うよりも一昔前の簡易コテージが建ち並んだ敷地を、半周周り一番奥まった部屋の駐車スペースに車を止める。
『ここから少し海が見えるかもしれない』そんな淡い期待を抱きながら車を止めた。
車を止めると不思議と二人無口になってしまった。
僕は押し黙った空気に少し気まずい感じを覚え、しきりに言葉を探し出そうとしたが、その必要はないかの様に夏恵が唇を寄せてきた。
『・・・・行こう』
夏恵は薄く柔らかな唇を、そうっとずらして僕を導いた。
僕は無言で頷きながらもう一度唇を寄せた。