子供達の声は僅かに聞こえるが、姿はそれが子供達なのか認識出来ない程遠くに見える。
僕は少しだけ疲れたので出来るだけ乾いている岩肌に腰を降ろした。
気をつけて歩いていたが僕の靴の中にはサラサラとした砂が入っていた。
僕は靴を脱いで岩肌に叩いて砂を掃う。
僕は自分の歩いてきた足跡を見つめる。
こんなに暑い砂浜を礼服で歩く自分を滑稽に思い可笑しくなった。
そして波が、すぐそこまで打ち寄せる岩肌の上で一人笑った。
中年の事はずっと頭の隅に残っていたが、僕はすっかり海に洗われたらしく大分楽になっていた。
そして僕の心の隅にあった中年へ抱いた好感の理由が理解出来た気がした。
彼もこの海に洗われていたのだろう。
僕は深く潮の混ざった空気を吸い込んだ。
そして感傷的な自分に可笑しくなって一人ニヤけた。