こんな感情を抱いたのは、いったいどれ位振りだろうか。
初めて女性に青臭く淡い気持ちを抱いた頃の様な、率直な感情が湧き上がっては津波の様に押し寄せて、涙を流しそうになる。
彼女の肌に触れたい。
彼女の唇に僕の唇を重ねたい。
彼女を強く抱きしめたい。
率直な感情はやがて強い感情に変わる。
それは人間の本質的な欲望であり、今の僕にとって邪な気持ちが生む欲望では無く、僕が深く彼女を欲する素直な欲望だ。
だが名前も素性も聞けない僕には、事を次に運ぶ勇気は無い。
僕は今の現状に甘えて指を咥えている事しか出来ない。