僕の間の抜けた返答に彼女は視線を僕に戻す。
そして昼間エレベーターの閉まり際に見せた様に僅かな微笑みを見せる。
僕は彼女の視線を失わずに済んだが、自分から発せられた言葉に当惑した。
僕はこれから言葉をどう紡いだら良いのか一瞬深く悩んだ。
僕は無言のまま溶けた氷で薄まったカクテルの最後の一口を飲み干す。
その液体は酷くカラカラに渇いた喉に染み込んで行った。
しかし僕の渇きは癒える気配を見せなった。
僕は彼女を渇望していた。
『・・・そうですねぇ・・悪くはないかも知れませんねぇ』
彼女はその美しい唇から言葉を発した。
僕は相変わらず何も言えないまま彼女の言葉に相槌を打ち続けた。
『・・・お酒もあるんだぁ』
そう言いながら彼女はメニューを覗き込み、メニューの上から下まで丁寧に指でなぞりながら次に頼む物を選んでいる様だった。
僕は彼女から目線を外す事が出来ずにいた。
外はまだ雨が降っている。