彼女はゆっくりとコーヒーを飲みながらチラチラと外を眺めた。

彼女が窓を眺める度に視線の途中に居る僕と時折視線が重なる。

僕はその時に少しだけ彼女の顔を伺い見る事が出来た。

髪はうっすらと乾いていたが水気は残っていた。

見方によっては、とても妖艶にも見えた。

鼻はそんなに高くないが、眉間から綺麗なカーブを描いた美しい雪山の尾根の様に鼻先へ向けて滑走していた。

瞳は窓の外をそのまま映し出しそうな位に深く澄んで見えた。

僕は彼女と目が合う度に胸の奥の何かを一つずつ啄ばまれる様な感覚に襲われる。

やがて、それは僕の本質的な感情のうねりを激しく奮い立たせる。

彼女が窓からコーヒーカップに視線を戻し、もう一度窓をその澄んだ瞳で見つめる瞬間が訪れる事を願う。

それは深い祈りとなる。

彼女がコーヒーを飲み干すまでに僕の心はすっかりと啄ばまれきってしまっていた。