『私達の間には娘がおりました』


『え?』


『私達の娘の名はナツエと言います・・・八月に生まれた元気な娘でした』


『夏恵?』


『夏恵は去年5歳の誕生日の前に亡くなりました・・・夏恵の大好きだった海で亡くなったんです』


『海・・・』


『ハルミはそれ以来変わりました・・・』


男はそう言ってコーヒーを少し飲み、深いため息を吐いた。

僕は相変らず混乱して意識を失ってしまいそうな錯覚にとらわれる。

だが男の口から放たれる言葉は一言も聞き逃す事は出来なかった。

僕は本当はこれ以上夏恵の事を聞きたくなかった、だがそれは僕の心の奥から沸いてくる指令だった為に僕は逆らう事が許されなかった。

男は止める事無く話を続ける。