『・・・すいません・・ホントは休みなんでしょ?』
『・・・いえ仕事ですから』
須藤は駅に着くやいなや頭を深々と下げて僕に謝った。
僕は月並みに応えて須藤を車へ案内し店舗へ運ぶ。
横殴りの雨が、つい最近まで夏であった事を忘れさせるかの様に降り注いでいた。
車のワイパーは激しい雨を拭い切れずにガラスをカーテンの様に覆う水に視界を奪われる。
須藤は物件のトラブルの為か、台風の中のドライブの緊張の為か分からないが以前よりも無口になっていた。
『・・・凄い雨ですねぇ・・・これじゃ雨漏りも仕方無いですね。』
須藤は明らかにテンションを低く呟いた。
僕は須藤の言葉に『被害が大きくなければ良いんですけど』とだけ応え慎重に運転を続けた。
物件に向かう途中の橋の上から須藤は川を見下ろし、橋のすぐ下まで迫った川面に『ひゃぁ』と声を上げていた。