クーラーの効いたエレベーターは彼女の香りを地上に残す事無く、無情に上昇する。
数秒間ではあったけれど、僕は体の熱気を少しだけ冷ます事が出来た。
「――チンッ」とベルが鳴り、無情にもエレベーターが4階に到着した事を告げる。
4階のドアが開きムワっと熱気がエレベーターの中に吹き込んで来る。
一瞬息が詰まるのを覚える。
夏の日差しは通路の先にある小窓からのみ差し込んでいるが、この狭い通路を蒸し揚げるには十分な大きさの小窓だった。
僕はエレベーター前の4階のフロア案内に目をやる。
目的の会社を見つけるのに時間は掛からなかった。
4階には4つの貸し事務所があり、3つが空き部屋だった。
402は僕の右手にある。
僕は右に体を向けた折、閉まりかけてるエレベーターに目をやる。
正しくはエレベーターの中の白いブラウスの女に目をやる。