『・・・姉さんの溺れたとこって何処?』
僕は二人に掛けてやる言葉は見つからなかったが、二人の気持ちを汲み姉に二人の報告をしてやる事にした。
『・・・勿来海岸よ。』
『なっ勿来~?!今夏休み中だよ!!・・・あんなに人の多い所で何を供えればいいわけぇっ?!目立ってしょうがないよ!!』
僕は戸惑いを隠せずに柄にも無く慌てた調子で声を荒げて言った。
すると父が『だから花とかでいいだろう?』と言ったので、僕は『よけい目立つだろう!!』と言った。
母は僕と父のやり取りを聞いて笑っていた。
母は玄関先まで僕を見送り、父は居間の方から座ったまま頼んだぞと声を掛けてきた。
『・・・じゃぁお願いね。』
『・・・母さん。』
『ん?何?』
『姉さんって幾つで死んだの?』
『・・・4歳よ。あなたが1歳の誕生日に撮った写真が最後の写真で遺影に使ったの・・・可愛そうな事したわ。』
母はそう言うと悲しくも優しい微笑みを浮かべ僕の肩を叩いた。
僕は一瞬夏恵が頭を過ぎったが、あまりにも馬鹿馬鹿しい考えに自分で可笑しくなった。
僕は明子と一緒に夏の海に向かう。