実家の前まで来ると先に帰っていた父と母がトランクから荷物を降ろしていた。
『おぉ・・どうした?』
父は僕に声をかけた。僕は車のエンジンを掛けたまま車を降り『コレ』と言ってハサミを母に差し出した。
母は『わざわざいいのにぃ』と言いながら嬉しそうにハサミを受け取った。
僕は結局、父と母に掛ける言葉を見つけられずに立ち去ろうとしたら、母がお昼をたまには一緒に食べていかないかと言ってきたので、僕は久し振りに母の言葉に甘え車のエンジンを切り、実に半年振りに実家の中へ入った。
久々に踏み込んだ実家は特に懐かしい感じも無かったが、前に来た時と変わらない風景が僕を安らげた。
母は落ち着く間も無く台所に向かい、父は居間の座椅子に腰掛けて煙草を吹かし始めた。