『・・・まっすぐ帰るのかい?たまには家によっていきなさいよ。』
『いや・・・今日は墓参りをするだけのつもりで来たから。』
帰り道の林道を下りながら母は僕に微笑みながら聞いてきたが、僕はポケットからタバコを出し火を点け申し出を断った。
父はそんな僕達の間に口を挟む事無く自分のタバコを取り出し火を点けていた。
『オマエ車で来たのか?』
『あぁ・・・停めるとこが無くて公園の脇に停めてきた。』
『・・・そう休みはいつまでなの?』
父と母は何か物言いたげだったが僕はタバコを吸いながら簡単な返答を繰り返し一人自分の車へ向かった。
僕は車に戻るとポケットの中に母から花を添える時に渡された、植木バサミが入っている事に気付いた。
急いで駐車場に戻ったが既に父の車は見当たらなかった。
僕は少し面倒だったが、いつも仏前に絶やす事無く花を挿す母が困らない様に実家に返しに行く事にした。
正直に言ってしまえば久々に会った父と母にろくな話もせずに場を去った事が少し気がひけた部分もあったのは確かだ。