『・・・なんだオマエも来てたのか?』
『あぁ今来たとこだけど・・・これ花』
僕はそう言って母に花を渡し、疎遠になっていた父は僕に少しだけはにかんだ様な笑顔を見せながら僕に線香を差し出した。
僕は『いや、持ってきてる』と言って自分の持ってきた線香を見せてから線香の包みを剥がした。
この四畳半程の空間には祖父母と僕の姉が眠っている。
僕の姉と言っても僕には姉の記憶が全く無い。
姉は僕が生まれてからすぐに亡くなった。
だから僕には意識できる姉が居ない。
それに父も母もあまり姉の事は話さなかったし、僕も幼い頃の事は覚えていないが姉の事を親に細かく聞いた事も無かった。
僕はそんな姉と祖父母を偲んで墓前に花を添え線香を上げた。