八月に入りお盆も近づくと、夏の暑さは更に厳しさを増した。

連日の様にテレビの天気予報は熱中症を防止する為に暑さ対策を促していた。

雨は降る事を忘れた様に雲一つ無い日が続いたが、僕の街は酷く蒸し暑かった。



僕の誕生日に見せた夏恵の涙の理由を、僕はその後も知る事は無かったが、僕と夏恵はその後も会い何度か体を重ねた。

そして明子は僕への疑念を抱きながらも献身的に僕を愛した。

僕は明子の抱いた疑念を晴らす事無く、ただ明子の献身的な愛にだけ応えた。

明子の気持ちを思うと、時折あまりにも無情な自分のしたたかさに腹立たしく思う事があったが、僕は明子に真実を話す事は出来なかった。

僕は決して器用な男では無いし、器用な男になりたいと思った事も無い。

何人もの女性を愛している事を自慢したい様な馬鹿な男でも無い。

ただ僕は明子に何も言えずにいた。

自分でも自分のしている事をちゃんと理解している、自分がどれだけ最低な事をしているのかも知っている。

僕はただ明子に何も言えず夏恵との快楽を贖えずにいた。