シャワーのノズルを捻り勢いよく噴射するお湯を僕は頭から浴びた。
少し熱めのお湯は冷えた僕の体には心地よかった。
僕は目を瞑り体を壁にもたれ掛ける様に、ただシャワーを浴び続けた。
どれだけ永い間浴び続けたのかは分からないが、僕がふと気付くと入口に夏恵が無言で立っていた。
夏恵はじっと立ったまま表情を変えずに裸のまま僕を見ていた。
まるで無機質な石膏で出来た中世の彫像の様に立ちすくんでいた。
僕は夏恵にかける言葉を必死に探した。
僕は先程の夏恵に戸惑い今だ不安を拭えずにいた。
僕もまた呆然と夏恵を眺めている事しか出来なかった。
一秒一秒がとても長く、僕達の間に沈黙だけが過ぎていった。