僕は夏恵を抱きかかえる様に砂浜に連れ戻し、裸のまま車まで連れていき、積んであったバスタオルで体を包んだ。
夏恵は僅かに震えながら涙を流し続けていた。
僕は無言のまま砂浜に向かい夏恵が脱ぎ捨てた衣服を集め車に戻った。
車に戻ると夏恵は助手席のシートの上でバスタオルを頭から羽織り繭の様に丸まっていた。
僕は震える繭にかける言葉を見つける事が出来ず、エアコンのスイッチを切ってから車のエンジンをかけた。そしてゆっくりと車を走らせた。
僕は深い闇の様な海から逃げるように、海岸から続く坂道を上り街中に続く国道へと出た。
『・・・寒くないか?』
僕は言葉を絞り出したが、夏恵は繭の中に閉じこもり言葉を返す事無く震えていた。
時折鼻を啜る音が聞こえて来る以外に夏恵の繭の中は沈黙のみが支配していた。
僕はどうする事も出来ずに羽化する事の無い繭を助手席に乗せたまま街中に入る手前のラブホテルに車を入れた。
そして駐車場に車を入れて夏恵を優しく揺すり部屋へ向かう様に促した。
夏恵は相変わらずバスタオルを頭から被ったまま裸で車から降り部屋へ向かった。
僕は夏恵の衣服を集め、白いトートバックに押し込み夏恵の後を追う様に少し遅れて部屋へ向かった。