新潟に着く頃にはすっかり深夜になっていて車もまばらだった。

そんな車もまばらな道を、僕達は西へ西へとひた走り日本海へ向かった。


開けた窓から潮の香りが吹き込んできた。

真夜中の海は潮が満ちて防波堤のすぐそばまで波が押し寄せていた。

僕達はテトラポットの上で潮を含み少し重くなった髪を夜風に揺らしながら眠りに落ちてしまいそうな、まどろみに包まれていた。

夏恵は目を閉じたまま僕の右肩に寄り掛かり波の音に耳を澄ませている様だった。

僕は海から海への長い旅路に疲れ果て目を閉じ、まどろみの中で眠りに吸い込まれそうになっていた。

僕は夏恵のタメ息を顎の辺りに感じ目覚めを促された様に目を開けた。

夏恵の鼻先の辺りに月明かりに照らされた雫が見えた。

それは夏恵の右目から零れ落ちた一筋の涙だった。

僕は夏恵の涙の理由を聞かずに夏恵の鼻先に顔を寄せて、鼻先にそっとキスをした。

夏恵は虚を突かれた様な表情を見せたが『・・・なんでもないの』と言ってキスを返してきた。